1st STATION『そして運命のベルが鳴る』
小学生A「だからさ林檎は宇宙そのものなんだよ。
手の平に乗る宇宙。この世界とあっちの世界を繋ぐものだよ。」
小学生B「あっちの世界?」
小学生A「カンパネルラや他の乗客が向かってる世界だよ。」
小学生B「それと林檎になんの関係があるんだ?」
小学生A「つまり、林檎は愛による死を自ら選択した者へのご褒美でもあるんだよ。」
小学生B「でも、死んだら全部おしまいじゃん。」
小学生A「おしまいじゃないよ!
むしろ、そこから始まるって賢治は言いたいんだ。」
小学生B「わかんねぇよ。」
小学生A「愛のハナシなんだよ?なんで分かんないのかなぁ~。」
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宮沢賢治の銀河鉄道の夜…だね、確かに。この良いようだと、ラストはやっぱあっちの世界に行っちゃったって感じなのかしらね。**************************
12話 (陽毬の心停止時)
メリーさんは美しい3匹の子羊を飼っていました。
牧場を連れて歩けば、誰もが振り返ります。
子羊たちの毛はまるで天使の羽のよう。メリーさんは、それを紡いで糸にする日が待ちきれません。
ところが、ある朝、メリーさんは目覚めてビックリ。庭の林檎の木が枯れています。
それは世界で最初の木。
毎年、見事な黄金色の実を山のように実らせる、メリーさんの大事な大事なもう一つのご自慢だったのです。
林檎の木に駆け寄ると、メリーさんは泣き出しました。
かつて林檎の木は、その輝きで世界の未来・夢・愛を照らしていたのです。
世界は闇に包まれてしまいました。
メリーさんは泣いて泣いて、子羊たちの慰めも耳に届きません。
そんな時、ふいに空から声が降ってきました。
「あきらめないで」「まだ世界は、終わったわけじゃないから」
メリーさんが顔を上げると、見たこともない大きな黒い兎が岩の上に座っていました。
黒い兎は言いました。
「森の奥に女神の神殿があるだろう?」
「そこで燃える松明の灰を取っておいで」「その灰を撒けば、たちまちこの木は元気になるよ」
メリーさんは首を振りました。
女神の火には人が触れてはならないと、掟で決まっていたのです。
「灰をちょっと拝借するだけさ、それで世界は再び光に照らされるんだ」「女神様だってお喜びになるさ」
その夜、メリーさんは神殿の灰を盗んで、林檎の木に撒きました。
黒い兎が言ったとおり、林檎の木は生き返りました。
メリーさんは大喜び。木の下でダンスばかりして、3匹の子羊たちも目に入りません。
しかし、女神様は激怒しました。
やはりそれは、掟破りだったのです。
女神様は、メリーさんに罰を与えることにしました。
でも、その罰はあくまで女神様の気まぐれで…
「ド、レ、ニ、シ、ヨ、ウ、カ、ナ」
女神様は3匹の中で一番小さな、幼い羊を選びました。
選ばれた子羊は、気立ての優しい素敵な女の子。
料理と編み物が好きで、いつも2人の頼りない兄の心配ばかりしている、小さな女の子でした。
残された兄弟羊は言いました。
「女神様、どうして陽毬を選んだんですか?」
「だって罰は、いちばん理不尽じゃないとね」
13話 (陽毬の蘇生時)
ふいに女神様は、末の子羊に死の罰を与えるのをやめました。
しかし、女神様は、子羊たちを憐れんで罰を取りやめたわけでも、メリーさんに情けをかけたわけでもありません。
女神様は言いました。「だって、これで罰が終わりじゃあ、つまらないでしょ?」
(黒兎たち)「そのとおり!」
関連神話・伝承
- 北欧神話の、定期的に食べることで神々に不老不死を与える林檎の樹
- 旧約聖書の、蛇にそそのかされて智恵の実を食べ、楽園追放の罰を受けるアダムとイブ
- ギリシャ神話の、人類に火を与えて主神ゼウスの怒りを買い罰せられたプロメテウス
- 北米インディアンの伝承「天の火をぬすんだウサギ」
- 枯れ木に灰を撒いて花を咲かせる「花咲か爺さん」
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この一連の童謡の様な伝承話もさることながら、女神様の声が優しくって逆に怖かったぞ。
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